2017年10月15日日曜日


ウィンザーチェア(Windsor chair)は、17世紀後半〜18世紀前半頃から
イギリスで製作され始めた椅子と言われています。
厚い座板に脚と細長い背棒、背板を直接接合した形状が特徴の一つ。
座板に直接、脚や背棒が組み込まれているので、座面に丸い脚の断面が見えます。

写真(↑)の椅子は、1920年ルシアン・アーコラーニ(家具デザイナー)が
設立した ercol(アーコール)で、1956年にデザインされ
英国で親しまれているスタッキングチェア(注1)
(ウィンザーチェアではありません)
スチームで湾曲(注2させるウィンザー様式の椅子製造技術を完成させた
アーコールの技術でつくられた、当時の新しいデザインの椅子と言っていいのかな。
(背棒や脚の接合方法や、座板(座面)が身体にフィットする形に
 少し削られているのもウィンザーっぽく感じます)

今よく見る椅子は、この様な接合ではなくて
ボルト等、別の金具で付けられたりしている(脚がスチール製だったりもするし)
木製の脚の長さやがたつきを直す時、座板と脚が別の素材で作られていたり
別の金具(ボルトとか、釘とか?)で接合されている場合
脚の下部(床に面した部分)をカットして
脚の長さを微調整しなくてはならないですが
4本ある脚の長さを下部で一本ずつそれぞれ微調整するのはとても難しそう。

それよりまず、床に面した部分を微調整し安定させて(がたつきを無くし)
座面から上にはみ出た脚の上部をカットした方がより安定する気がする。
(でも座板と脚が別々の構造だと、この上部カット方法は無理ですよね...)
アーコールの椅子は実際、上部でカットしていたとか聞いた事は有るけれど
私は家具職人じゃないので、これは勝手な想像…。
写真の椅子の脚は、上下(両先端)が細く、中央に向かって徐々に太い。
一見、座板の穴の大きさを考えると、これでは調整できない?(脚を動かせない)
様にも感じるけれど、もし脚が一定の太さだと座面とは固定されないだろう。
穴に対して脚の直径が太いけれど、それを押し込むかたちで合体(接合)
また、座板に大して垂直ではなく、裾広がりに斜めに脚を差し込む事で
それ以上、脚は動かない仕組みなのだと。
(これ、家具職人のが読んだら笑われそうだけど…)

椅子の脚ががたつくのは、椅子の脚がすり減る事が原因でもあるけれど
昔は床面の歪みも有ったから、と教わりました。
脚の長さを調整するのではなく、脚の本数でも解決出来ると思うのですが。
現代ではそんな事(椅子脚がたつき問題)もないですね。

今、日本民芸館でウィンザーチェアの展示が見られると知って
部屋にあるアーコールの椅子を眺めていたら気になったので
ちょっとだけ書き留めてみました。
ウィンザーチェアの脚や背棒の太さが徐々に膨らんでいるその曲線ラインは
制作過程上で必要で、かつ見た目にも綺麗。柳宗悦が言う「用の美」ですね。

ものの構造って面白いなぁと思います。
椅子の脚、一本見ているだけで沢山の工夫が見えて来ます。


(注1)
アーコールの椅子は、ファッションデザイナーのマーガレット・ハウエルが紹介して
ある時から日本で急に人気になりましたね。

(注2)
曲げ木の椅子と言えば、Michael Thonet (ミヒャエル・トーネット)
1819年に設立されたドイツを代表する家具ブランド。
曲木技術を完成させ、世界で初めて曲木家具の大量生産に成功したメーカー。